Xデー、破産免責当日

Xデー・・・などと大袈裟な見出しを付けましたが、私の場合、肩透かしのような裁判でした。

 

先の記事『倒産の際の弁護士選びについて』で紹介したように、金融商品業界のみで倒産を発表したため、債権者が誰ひとり現れず、淡々と状況の確認が行われただけだったからです。

 

免責、という結果が出ない限りは、自己破産、倒産は認められません。本来は支払能力があるにも関わらず、倒産や破産の申請をした場合、免責を受ける事ができません。

 

この記事では、当日の紹介をしたいと思います。ずいぶん昔の話ですので、忘れてしまっている部分もありますが、できる限り、説明したいと思います。

 

弁護士から裁判所への出廷日の連絡を受ける

 

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まずは、このXデーは弁護士と裁判官で決めます。倒産を覚悟した日をXデーとすべきか迷いましたが、その日はまだ、決着の付いた日ではないので外しました。

 

この出廷日は、1か月ほど前には分かっていたと思います。私は当時、二交代の工場へ勤務していたため、シフトで休みを申請しました。1か月ありますので、大抵の企業が休暇申請には応じてくれるでしょう。

 

当日は、現地集合でした。裁判所です。駐車場で弁護士と待ち合わせて、中へ入るという流れです。前の案件が長引いたりすると、待ち時間が長くなると聞きましたが、私の時はすんなりオンタイムで開始されました。

 

弁護士の作った状況説明書の読み上げと裁判官による事情聴取

 

「特に何も説明する事はありません。裁判官の質問に素直に答えてもらえれば大丈夫です」

 

裁判という物が生まれて初めてだった二十代半ばの私は、緊張していました。そして、予め対策を打とうと弁護士にどうしていればいいのか尋ねた際に、こう答えが返って来ました。

 

そのまま、出廷しました。中には裁判官と管財人だったと思います。2名いました。そして、席に着くと、弁護士が会社名や私の名を読み上げ、状況説明を始めました。

 

「予め、資料には目を通されてます。免責は間違いありません。安心してください」

 

そう言われていた私は、何だか業務的なこの状況説明と問答が滑稽に映りました。淡々と進む中、裁判官は口にしました。

 

「債権者もおりませんので、異議はないと思いますので・・・免責とします」

 

というような感じで、20分程度、テーブルを囲んで話しただけで終了しました。この後、管財人が財産の管理をしますが、私は家しか処分できる物がなかったため、不動産業者と面談して、家の売買にサインする程度でした。

 

引越のために、身軽にしようと家財のほどんどはオフハウスなどのリサイクルショップに引き取ってもらい、家族ともども引っ越しました。

 

想像しているよりもイージー

 

散々借金苦で悩んでいた私にとっては、想像以上にイージーでした。死のうと思った自分をあざ笑いたくなるほど、何をそこまで追い詰まっていたんだろうと、振り返れば何とも滑稽な己に見えました。

 

悩んでいる時は、それしか見えなくて、視野狭窄に陥っている事にすら気付けなくなっている物です。一歩引いてみたら、意外と大した事なかったりもするのですが、その一歩引くが難しいのも現実でしょう。

 

生真面目な人ほど、自己破産をしたがらず、自殺をしやすいそうです。

 

命を捨てるほどの失敗でしょうか。命は買えません。どんなに金持ちが金を積んでも、死ぬ時は死ぬしかないのです。

という事は、金と命を天秤にかける事自体が間違えなのです。

 

資本主義社会である以上、金はパロメーターだと言えますが、金のために命を捨てたり、他人の生活を脅かしたりするくらいなら、一度ゼロにクリアして、安い賃金でも生活が成り立つ環境を作る方が、建設的ではないでしょうか。

 

Xデーなどと言いましたが、死ぬ事以外はかすり傷だと思うくらいの方が、人生は楽しめると思います。